No63 ジアゾ成分事件
 審決が具備すべきもの 最三590313 特157A四
【要旨】  審決には,審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要する。
【判示】  特許法は,特許に無効原因がある場合について,直接当該特許の取消ないしは無効確認を求めて訴訟を提起することを認めず,特許を無効にするための手続として,民事訴訟手続に準じた審判手続を設け,特許無効の審判を請求した者と特許権者とを当事者として関与させ,特許の無効原因の存否について専門的知識経験を有する審判官による審理判断を経由することを要求するとともに,その審決に対しては取消訴訟において専ら審決の適法違法のみを争わせ,特許の適否は審決の適否を通じてのみ間接にこれを争わせるにとどめているところ,その趣旨とするところは,特許に無効原因があるかどうかについては,右審判手続において法律上及び事実上の争点について十分な審理判断をすべきものとするにあると解される。
 また,特許法は,右取消訴訟を東京高等裁判所の専属管轄として事実審を一審級省略しているのであるが,このことは,特許の無効原因の存否については,すでに審判手続において当事者の関与のもとに十分な審理判断がされていることを前提としているからにほかならないと解されるのである。
 これらの点に鑑みると,特許法157 条2項4号が審決をする場合には審決書に理由を記載すべき旨定めている趣旨は,審判官の判断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保証すること,当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあるというべきであり,したがって,審決書に記載すべき理由としては,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について判断を示す場合であるなど特段の事由がない限り,前示のような審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要するのが相当である。

【解説】  ★
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