【要旨】 損害賠償の請求については,乙が損害賠償請求の対象とされている類似の商品表示の使用等をした各時点において,甲の商品表示が周知性を備えていることを要す。 |
【判示】 自己の商品表示が不正競争防止法1条1項1号にいう周知の商品表示に当たると主張する甲が,これに類似の商品表示の使用等をする乙に対してその差止め等を請求するには,甲の商品表示は,不正競争行為と目される乙の行為が甲の請求との関係で問題になる時点,すなわち,差止請求については現在(事実審の口頭弁論終結時),損害賠償の請求については乙が損害賠償請求の対象とされている類似の商品表示の使用等をした各時点において,周知性を備えていることを要し,かつ,これをもって足りるというべきである。
けだし,同号の規定自体,原判決説示のように周知性具備の時期を限定しているわけではなく,周知の商品表示として保護するに足る事実状態が形成された以上,その時点から右周知の商品表示と類似の商品表示の使用等によって商品主体の混同を生じさせる行為を防止することが,周知の商品表示の主体に対する不正競争行為を禁止し,公正な競業秩序を維持するという同号の趣旨に合致するものであり,このように解しても,右周知の商品表示が周知性を備える前から善意にこれと類似の商品表示の使用等をしている者は,継続して当該表示の使用等をすることが許されるのであって(同法2条1項4号。いわゆる「旧来表示の善意使用」の抗弁),その保護に十分であり,更には,損害賠償の請求については行為者の故意又は過失を要件としているのであって(同法1条ノ2),不当な結果にはならないからである。 |
【解説】 ★ #6参照 H19−56F |