訂正確定の効果  

大径角形鋼管事件最三判 平成11.3.9 (平7(行ツ)204号) 
 審決取消訴訟において、審判の手続において審理判断されなかった公知事実との対比における無効原因は審決を違法とし、又はこれを適法とする理由として主張することができないことは、当審の判例とするところである(最高裁昭和42年(行ツ)第28号同51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁)
 明細書の特許請求の範囲が訂正審決により減縮された場合には、減縮後の特許請求の範囲に新たな要件が付加されているから、通常の場合、訂正前の明細書に基づく発明について対比された公知事実のみならず、その他の公知事実との対比を行わなければ、右発明が特許を受けることができるかどうかの判断をすることができない。そして、このような審理判断を、特許庁における審判の手続を経ることなく、審決取消訴訟の係属する裁判所において第一次的に行うことはできないと解すべきであるから、訂正後の明細書に基づく発明ェ特許を受けることができるかどうかは、当該特許権についてされた無効審決を取り消した上、改めてまず特許庁における審判の手続によってこれを審理判断すべきものである。
 したがって、無効審決の取消しを求める訴訟の係属中に当該許権について特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には当該無効審决を取り消さなければならないものと解するのが相当である。